手形の金額欄に文字で「壱百円」と記載されその右上段に数字で¥1,000,000と記載された手形につき,最高裁は100円の手形と判示した(最判昭61.7.10民集40.5.925,なお,銀行と取引先との関係では,当座6条参照)。
満期または支払期日とは,手形金額が支払われる日として手形上に記載された日のことである。
これは「支払ヲ為スベキ日」(手77条1項3号=38条1項)とは異なる。
満期が休日(手87条)にあたるときは,これに次ぐ第一の取引日が支払をなすべき日である(手77条1項9号=72条1項)。満期の態様は,確定日払,日付後定期払,一覧払,一覧後定期払の4種類に限定され(手77条1項2号=33条1項),それと異なる満期や分割払の手形は無効である(手77条1項2号=33条2項)。
(イ)確定日払これは「平成14年9月30日」などと確定した日を記載するものであり,最も一般的なものである(なお,手77条1項2号=36条3項参照)。
満期日は確実に到来する日でなければならないから,暦にある日を記載しなければならない。
しかし,6月31日,11月31日や平年における2月29日を満期とした手形は,その月の末日を意味するものとして,確定日の記載があるとみることができる(最判昭44.3.4民集23.3.586)。
また,振出日より前の日を満期とした確定日払の約束手形は,手形要件の記載が相互に矛盾するものとして無効と解すべきである(最判平9.2.27民集51.2.686)。
(ロ)日付後定期払「日付後1ケ月半」,「日付後30日払」のように,振出日付を基準として,それから一定期間を経過した日を満期とするものである。
わが国では実際にはほとんど使われていない。
この場合の期間の計算方法については,特別の規定がある(手77条1項2号・9号.36条.37条.73条)。
これは,所持人が支払請求のために手形を呈示した日を満期とするものである。
「請求次第支払う」,「呈示次第(支払う)」などと記載する。
一覧払手形の所持人は,振出日付から1年以内に手形を呈示して支払を請求しなければならない。
支払呈示はいつでもできるのが原則であるが,支払呈示期間につき振出人によるその期間の伸長ないし短縮,裏書人による短縮が認められる(手77条1項2号=34条1項)。
(二)一覧後定期払これは,所持人が一覧のために手形を呈示した日(満期を定めるための呈示)から一定期間経過した日を満期とするものである。
「一覧後10日」,「一覧後1ヶ月」などと記載する。
手形が呈示されると,振出人は一覧した旨を記載し,日付を付して署名しなければならない。
期間計算の方法は,日付後定期払の場合と同様である(手77条1項2号=36条1項・2項・4項・5項・73条)。
(e)振出日(手75条6号)約束手形には,手形を振り出した日すなわち振出日を記載しなければならない。
振出日は,日付後定期払手形の満期,一覧払手形および一覧後定期払手形の呈示期間を定める基準となる。
このように満期や呈示期間を確定するための基準であるから,振出日は単一でなければならず,可能な日でなければならない。
しかし,振出日は手形意思表示の内容をなすものであって,事実の記録ではないから,実際に手形を振り出した日を記載する必要はなく,実際の日よりも過去の日を記載してもよく(後日付手形),またそれよりも将来の日を記載してもよい(先日付手形)。
なお,確定日払手形の振出日は,満期が定まっているから,支払に関しては振出日の記載は実質的に意味が乏しく,実際にも振出日白地の確定日払手形が多数流通している。
そこで確定日払手形の振出日は手形要件ではないとする説もあるが,通説・判例は,手形法は満期の種類を問わず一律に振出日を絶対的記載事項としているのであるから,確定日払手形にあっても振出日は手形要件であると解している(最判昭41.10.13民集20.8.1632)。
(f)支払地(手75条4号)支払地とは,満期において手形の支払がなされるべき地域のことである。
支払のなされるべき地点としての支払場所とは異なるが,支払場所はこの地域内に含まれていなければならない。
実際に支払がなされるのは,支払地内にある振出人の営業所・住所(第三者方払手形のときは,支払をなすべき第三者方)であるが,手形法は,この支払場所を探す手がかりを与えるために,支払地を記載すべきものとした。
したがって,支払地は一定の広がりを持った地域でなければならない。
そのため,判例は,支払地は最小独立の行政区画(市町村,東京都は区)を記載すべきものとしているが(大判大13.12.5民集3.526),必ずしも区画をはっきり示す文字を書かなくても,また普通の手形用紙の支払地欄に記載しなくても,最小行政区画を推知できる文字が手形上記載されていればよいとされている(最判昭35.10.2ジユリ217.214,最判昭37.2.20民集16.2.341)。
(9)振出地(手75条6号)振出地とは,手形が振り出された所として手形上に記載された地域である。
現実に手形が振り出された区域を記載する必要はない。
振出地についても,判例は,支払地と同様に,最小独立行政区画を記載すべきものとしているが(大判大13.3.14民集3.116,東京高判昭27.6.21高民集5.299),学説は,法律上は単に国名を記載するだけでもよいとしている。
なぜなら,振出地の記載は,国際間の手形取引において,準拠法の決定(手89条)などの基準となることから,このためには国名の記載があれば足りるからである。
「振出地東京都」とだけ書いてある手形を有効とした判例もある(東京地判昭32.2.11下民集8.2.252)。
(h)受取人(手75条5号)受取人とは,手形金の支払を受けるべき者として記載されている者をいう。
最初に手形の交付を受けた者であるとは限らない。
また実在の人物や会社であることは必要でなく,仮説人や架空の会社が記載されていても手形は無効とならない(東京高判昭29.10.22下民集5.10.1752)。
しかし,約束手形には必ず受取人を記載し,かつ特定していなければならず,小切手と異なり,無記名式(持参人払式)の手形は認められない(小5条対照)。
受取人の表示方法は,具体的に特定の人を表すものとして社会通念上認められる名称を記載すればよい。
個人の場合には,本人の氏名のほか商号・通称・芸名・雅号・ペンネーム等で表示してもよい。
会社などの法人の場合には,法人名だけを記載すればよく,代表者や代理人の氏名まで記載する必要はない(大判明38.2.23民録11.259)。
また,本店または支店の別を記載する必要もない。
振出人(手75条7号)振出人とは,手形を振り出した者である。
振出人は,以上の要件を記載した上で,手形に署名しなければならない。
これは約束手形の振出人が,手形債務につき絶対的義務者として責任を負うからである(手78条1項=28条1項)。
署名の際に表示される振出人の名称は,受取人の場合と同様である。
複数の者が共同して手形を振り出すことは可能である。
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